はじめに
映画を観ているとき、音楽がシーンを形作る上でどのような役割を果たしているのか、気になる人もいると思います。音楽はディレクターにとって、映画のジャンルやムードを伝える強力な手段であり、場面の意味を高めます。音楽ディレクターにとって、クラシック音楽の使用はシーンを描写するための最も効果的な方法の一つです。それは何世紀にもわたって人々によって聴かれてきたクラシック音楽が、感情を伝える特定の力を持つことを証明しています。そのため、多くの映画が物語にクラシック音楽を使用しています。ただし、クラシック音楽の選択は慎重に考慮する必要があります。このブログでは、クラシック音楽を使用した映画（ドラマ）のいくつかを紹介します。もしあなたがクラシック音楽と映画の両方のファンなら、映画の中のクラシック音楽の世界に没頭する絶好のチャンスです！
Dies Irae（ディエス・イレ）
「ディエス・イレ」を聴くと、恐怖、恐ろしさ、あるいは死に向かう感覚を抱くかもしれません。この現象は個人特有のものではありません。1200年代以来、この音楽は、死と関連付けられてきました。映画作曲家だけでなく、クラシック音楽の作曲家も、このテーマを使って暗闇、恐怖、死を表現してきました。しかし、この音楽は一体何なのでしょうか？なぜ死の思いを呼び起こすのでしょうか？
ラテン語のフレーズ「ディエス・イレ」は英語で「怒りの日」を意味し、1256年頃にグレゴリオ聖歌に最初に見られた4つの音で構成されています。最初は葬式で使用され、「ディエス・イレ」は頻繁にレクイエムミサで用いられました。モーツァルト、ベルリオーズ、ヴェルディなどの著名なクラシック作曲家は、これらの4つの音を自作に取り入れ、その使用例として知られています。1200年代から19世紀末まで、この音楽的なモチーフの使用は映画作曲家の作品にも広がりました。その結果、死や恐ろしい悲劇を描写する際に、この音楽を使っている映画をいくつも見つけることができます。
シャイニング
1980年にスタンリー・キューブリックが監督し、有名なホラー映画として知られる「シャイニング」のオープニングシーンには「ディエス・イレ」が使われています。最初のシーンを説明なしで見ると、家族の旅を想像し、何か幸せなことが起こると期待するかもしれません。しかし、これはホラー映画です。音楽ディレクターは、微妙な恐怖感を伝えるために、このシーンで「ディエス・イレ」を選んだのです。
イカゲーム
微妙にアレンジされているものの、ピンクの兵士たちが初めて登場するシーンは、「ディエス・イレ」を使って彼らの恐ろしい特徴を完璧に描写しています。Netflixの『イカゲーム』は、死と闘争を特色とする残酷で人生を奪う戦いのドラマです。この意味で、「ディエス・イレ」は、音楽ディレクターが、シリーズの恐ろしいムードを描写するために選んだものでした。
「ディエス・イレ」についての情報はこちらから！
リヒャルト・シュトラウスによる「ツァラトゥストラはかく語りき」
もしもSF映画のファンなら、「2001年宇宙の旅」をもちろん観ているでしょう。この象徴的なSF映画は、画期的なビジュアル効果、哲学的なテーマ、そして謎めいたストーリーテリングで知られています。もしこの映画を見たことがあるなら、この音楽にももちろん馴染みがあるでしょう。リヒャルト・シュトラウスによる「ツァラトゥストラはかく語りき」（"Also sprach Zarathustra"）は、この伝説的なSF映画の始まりを感じさせる卓越した音楽です。なぜなら、この音楽は映画の主要なストーリーと完璧にマッチしているからです。
2001年宇宙の旅
また、シュトラウスは1896年にこの作品を作曲し、フリードリッヒ・ニーチェの同題の哲学的論考に対する音楽的な反応としています。興味深いことに、ニーチェの論考は科学の台頭についての新しい論述を論じていました。架空の預言者として、ザラスシュトラは啓示を求めて旅に出、超人となるために山で10年を過ごします。ニーチェはこの作品で有名な言葉「神は死んだ」と残しました。『2001年宇宙の旅』は宇宙探査、人類の進化、地球外知的生命体との遭遇を探求し、シュトラウスの音楽作品のテーマとよく一致しています。
さらに、映画のオープニングシーンでは、地球の背後から太陽が昇る様子が、象徴的なトランペットのC-G-Cの上昇するメロディとともに「ツァラトゥストラはかく語りき」で表現されています。特に象徴的なモノリスと宇宙のシークエンスの中で映画での音楽の使用は、その影響を高め、その持続的な文化的意義に貢献しています。
弦楽のためのアダージョ
もしも憂鬱や悲しみ、悲哀のクラシックを探しているなら、サミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」はいかがでしょうか？この「弦楽のためのアダージョ」は、サミュエル・バーバーが1936年に作曲した有名なクラシック音楽の一つです。音楽史上で最も有名なクラシック音楽の一つとして、「弦楽のためのアダージョ」が映画で使われています。具体的には、長いメロディーでの弦楽器の使用や、繊細に作曲されたダイナミクスが悲しみを呼び起こします。興味深いことに、「弦楽のためのアダージョ」は1938年に初めて演奏され、アメリカの大恐慌や世界中での世界大戦などで人類に大きな影響を受けていた時代でした。そのことから、この作品は集団的な悲しみと結び付けられるようになり、様々な映画で使われるようになりました。
プラトーン
『プラトーン』は、おそらく「弦楽のためのアダージョ」を使用した最も有名な映画でしょう。1986年に公開されたこの映画は、ベトナム戦争を描いており、兵士たちの歩兵大隊の体験を描写しています。この映画は、現実的でありながらも残酷で複雑な戦争の葛藤を特色としており、兵士たちが直面する道徳的ジレンマや恐怖を描写しています。「弦楽のためのアダージョ」は、特に感情的で緊張感のあるシーンで使用され、その音楽は大衆文化の中でベトナム戦争と密接に関連付けられるようになりました。
ハンガリー狂詩曲 第2番
最後に悲壮のクラシック音楽から陽気なカートゥーン風のクラシック音楽へと移りましょう。それが「ハンガリー狂詩曲 第2番」です。 「ハンガリー狂詩曲 第2番」は、ハンガリーの作曲家フランツ・リストによる最も有名で愛されている作品の1つです。1847年に作曲され、19のハンガリー狂詩曲のセットの一部であり、エネルギッシュで巧みなピアノ演奏で知られています。ハンガリーの民族曲、ジプシー音楽、そしてダンスに強く影響を受けており、速いテンポと情熱的なメロディが特徴です。さらに、ピアニストは聴衆を惹きつけるためにキャッチーで劇的な技術を要求されるため、独奏者には巧みなピアノの技術が必要です。そのため、これはリストの最も愛されるピアノ曲となり、さまざまな映画やカートゥーンで使用されています。
トムとジェリー
トムとジェリーはおそらく、アニメ史上最も有名なライバルキャラクターでしょう。トムは、エピソード「The Cat Concerto」でフランツ・リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」を演奏するピアニストになります。ジェリーはピアノの中で横になっていて休むことができず、2人のキャラクターのユーモラスなやり取りが自然に始まります。リストの象徴的な曲をピアノのキーをコミカルに叩くことで描かれています。
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